昔話

【足柄山の桃太郎】桃太郎は金太郎ワールドでも鬼退治に粘着!?絶対化した正義のさいごとは

やっぱり鬼退治してしまう桃太郎の物語です。

条件設定は、金太郎の代わりに桃太郎が主人公になる、です。

サクッとお読みいただけますよ。

足柄山の桃太郎

あしがら山に、桃太郎という男の子がいました。

いつも赤い腹かけすがたの桃太郎は、一人きりで山の野っぱらにころがって物思いにふけっていました。

桃からうまれたから「桃太郎」と、おじいさんもおばあさんも話していましたが、二人はじぶんがだれかわからなくなることがときおりあって、だれもおじいさんとおばあさんの言動をしんじてはいませんでした。

そんなおじいさんも、おばあさんも、桃太郎が物心つくころには亡くなっていました。

桃太郎は子どものいない村の女性にひきとられ育てられていたのでした。

じぶんはいったい何者なのか──

じぶんはいったいどこからやってきたのか──

じぶんはいったいなんのためにここにいるのか──

桃太郎は山の野っぱらにころがって考えこむことがありました。

そんなときの桃太郎は、まばたきしない黒い瞳で、まっすぐに遠くをにらんだままなのです。

継母はそんな桃太郎がとても心配で不安でした。

すぐそこにいるはずの桃太郎を、とても遠くに感じてしまうからでした。

「かあさん、おれかならず、わるい鬼を退治するからね」

桃太郎のくちぐせでした。

「あらまぁ、たのもしいわね」

「鬼はわるい。ゆるしちゃだめなんだ」

鬼は存在するそれだけで悪であると、村のお年寄りから聞いてそだちました。

親兄弟を鬼にころされたと、そのお年寄りは桃太郎に話したのです。

桃太郎は、鬼はこの世にいてはいけないもの、とりのぞかなければならないもの強く憎むようになっていたのです。

まさかりで木を切って、それを割って薪にするのが役割でしたが、桃太郎は不満でした。

はやく鬼を退治して名をあげて、お城勤めしたかったのです。

継母がおいしいごはんを作ってくれても、桃太郎はいつもむっつり不機嫌でした。

 

そんな桃太郎ですから友だちはいませんでした。

山のどうぶつたちはいつも怒っているような桃太郎をこわがってさけていたのです。

あからさまにさけられていましたが、意志が強いのか、たんじゅんに鈍いのか、桃太郎はまったく気づいていません。

「おまえたちも鬼退治しよう。そのためにきたえるんだ」

山のどうぶつたちは、くる日もくる日もすもうをとらされました。

桃太郎はすわってながめるだけ。

山のどうぶつたちがとりくみするのです。

一人で鬼退治に行けばいいじゃないか──

山のどうぶつたちは内心はらをたてますが、じっと見つめてくる桃太郎のまなざしは冷ややかです。

おだやかではありません。

なんだかそらおそろしい、狂気のたぐいをはらんでいるようにも見えるのです。

大きなクマも、かしこいサルも、ゆうかんなイノシシも、桃太郎にさからえなくなってしまうのでした。

 

ある日、継母がこしをいためたとき、桃太郎は山のどうぶつたちに命じました。

荷車に継母をのせて山ふたつこえたさきの温泉までひいていくように、と。

またべつのある日、嵐で橋がながされてしまったときも、桃太郎は命じました。

お年寄りが安心して川をわたれるよう三日以内に丈夫な橋をかけるように、と。

そんなふうに、ときおり桃太郎からの理不尽にさいなまれる山のどうぶつたちでしたが、あるうわさがひろがるようになっていました。

あしがら山でおこなわれるすもうは見ごたえがあってすばらしい、と。

桃太郎への不満はくすぶっていましたが、となり村やそのまたとなり村からもつぎつぎ見物人がやってくるので、自尊心がみたされて、山のどうぶつたちはまんざらでもなくなっていたのです。

 

あるとき、サムライたちがやってきました。

「山のどうぶつたち、なかなかのツワモノぞろいだな、あのクマもイノシシも」

サムライに褒められて、すもうをとるクマとイノシシは天にものぼるうれしさです。

「これはそなたらの土俵か? そなたらの考えか?」

サムライがたずねるなり「はい!」とイノシシがこたえます。

クマとのはげしいとりくみでイノシシは息があがってぜいぜいあえいでいて、桃太郎の剣呑なまなざしには気づいていません。

クマがおそるおそるイノシシをつつき、桃太郎のほうへあごをしゃくりました。

イノシシは桃太郎をちらと見ると、みるみる真っ青になってつぶやきました。

「もうしわけございません。。。土俵は、桃太郎さまのものでした。。。」

「桃太郎とは、いずこに?」

「わたくしです」

桃太郎は凛としてたちあがり、サムライにおじぎします。

「山のけものらをしたがえました。すもうは鬼退治のためのたんれんです」

「たしかな強さだな。わしはミナモトノ・ヨリミツともうす」

「お褒めにあずかり光栄です」

「桃太郎よ、おぬしはすもうせぬのか?」

「わたくしは大将です。大将は大局をみるもの。すもうはとりません」

「なるほど。それでみな、おぬしにしたがうのか?」

「わたくしは、けものらに目標をあたえました。目標は、けものらに輝きをもたらしました。けものらはいま、いきいきと輝いています。命令するし号令をかけますが、それはけものらのためでもあるのです」

ミナモトノ・ヨリミツはうなりました。

そして品定めすように桃太郎をながめました。

「おぬし融通がきかなそうだが、どうだ、わしのもとに来ぬか? 剣と学問をおしえる」

桃太郎はしぶりましたが、剣はともかく文字を読めるようになるならと、継母に相談することなくその場で決めたのです。

とつぜんの出立でした。

継母は悲しみましたが、鬼退治するという妄執が、桃太郎のこころをふかいところまでむしばんでいるのをだれよりもよく知っていました。

「かあさん、おれかならず、鬼をねだやしにします。お体、だいじになさってください」

山のどうぶつたちはホッと息をもらしましたが、おまえらも支度しろと桃太郎からのことばがあってから、やるせなさと、でもたよられているという自尊心がないまぜになって、ここまできたらくされ縁だし、しかたがないからやってやるという境地におちつくのでした。

桃太郎はヨリミツから「サカタ・モモトキ」という名をさずかりました。

都ではヨリミツ四天王とよばれるサムライの一人にばってきされてだいかつやくしましたが、わるさをしたものが追いつめられたときにいくら泣いてゆるしを乞おうとも、いっさい例外なく首をきりおとしました。

モモトキはいつからか陰で「鬼のモモトキ」とよばれるようになっていたのでした。

晩年のヨリミツはモモトキに剣をおしえたことを悔いながらこの世をさりました。

それからしばらくのち、女こどもまで鬼がねだやしにされたといううわさが、あしがら山にとどきました。

血しぶきがやまず、それはこの世ではない阿鼻叫喚のありさまであったと。

山の広い野っぱらのかたすみで、幾日も幾日も、しわ枯れた老婆がはらはらと涙をおとしていたということです。

桃太郎 ~基本世界情報

名前 桃太郎

出身 岡山(諸説あり)

職業 無職→のちに長者(鬼から財宝強奪)

特技 号令(家来に突撃命令)

性格 独善的

武器 太刀

防具 はちまき、陣羽織

道具 きびだんご

家来 イヌ、サル、キジ

あらすじ 老爺が川で拾った巨大桃から桃太郎誕生。成長してある日とつぜん鬼退治を宣言。家来をつれて鬼ヶ島へ渡り鬼討伐。金品を持ち帰る。

金太郎 ~基本世界情報

名前 金太郎→のちに坂田金時

出身 足柄山

職業 家事手伝い(まきわり)

   →のちに京で武将(源頼光の四天王の一人)

特技 すもう(怪力)

性格 優しく温厚

武器 素手(木材伐採用にまさかり所持)

防具 赤色のはらかけ

道具 なし

仲間 クマ、サル、タヌキ、イノシシ、

   森のどうぶつたち

あらすじ 足柄山で誕生。幼少時から超怪力。森で巨木を倒して川に橋をかけたり巨大熊をすもうで投げ飛ばしたり。学問と剣術を学んで京にのぼる。源頼光に見出されて武将となり悪党を懲らしめる。

⭐ポチッと応援お願いします _(._.)_

あきまる挑戦記 - にほんブログ村

人気ブログランキングでフォロー

  • この記事を書いた人

あきまる

会社員のパパです。 趣味は投資と料理とゲームと書き物。 基本インドアですが秋冬春はジョギング、 夏は海でシュノーケリングを楽しんでます。

-昔話

Translate »